ページ・ワン/ジョー・ヘンダーソン
2023/02/02
《リコーダ・ミー》で印象が変わった
ジョーヘンの初リーダー作の『ページ・ワン』は、最初、好きなアルバムではかった。
妙にサウンドの風通しがよく、スカスカした感触だったので。
熱病のように、なにがなんでも「ハード・バップの熱い演奏!」を求めていた頃の私にとっては、妙にスカスカした肌触りと、他のところでは熱い演奏をしている顔ぶればかりのジャズ・マンたちが、手抜きとまでは言えないまでも、妙に遠慮してか、それとも気取ってかは分からないが、体内の熱を醒ましながら演奏しているように聞こえて仕方なかったのだ。
もっとも、今考えてみれば、演奏に求めるものが違っていただけで、今ではこのアルバムの良さがとても分かる。
そう、《リコーダ・ミー》の良さに目覚めてからは。
考えてみれば、前半の《ブルー・ボサ》」ばかり聴いていた。ケニー・ドーハムが愛弟子ヘンダーソンのリーダー吹き込みのために、わざわざ書き下ろした曲だ。
しかし、レコードで言えば、B面にあたる《リコーダ・ミー》にハマると、こちらばかり聴くようになってしまう。
まるで《ブルー・ボサ》を裏返したような、愛くるしいメロディはどうだ!
ちょっと哀愁。
ちょっと懐かし。
ちょっとくすぐったい。
私の心の琴線をチクチクする。
今では、このアルバムの特有の涼しさ、そしてスカスカ具合が逆に気持ちが良い。
そして、ジョー・ヘンダーソンの今後出すリーダー作の中でも独特な触感をたたえた、この「音触り」は、思いのほかケニー・ドーハム効果が大きいということが、よく聴くとわかってくるだろう。
それにしても、5曲目の《Jinrikisha》って、「人力車」……?
記:2002/02/25
album data
PAGE ONE (Blue Note)
- Joe Henderson
1.Blue Bossa
2.La Mesha
3.Homestretch
4.Recorda Me
5.Jinrikisha
6.Out Of The Night
Joe Henderson(ts)
Kenny Dorham(tp)
McCoy Tyner(p)
Butch Warren(b)
Pete La Roca(ds)
1963/06/03
追記
関東は数日前に梅雨入りしましたが、以降、いかにも「梅雨だぞ!」と感じるようなジメジメとした日や、雨が降りっぱなしという日には今のところ遭っていません。
午後になってからは、ムシムシするほどではないのですが、じゃっかん湿度が高くなってきましたが、今日の午前中の東京は、わりと「カラッ!」とした気持ちの良い陽気でした。
こういう、
カラッ!⇒ムシッ!
とくる日の午後に聞きたくなるのが、ジョー・ヘンダーソンの『ページ・ワン』ですね。
私は、このアルバムを始めて聴いたときには、なんてスカスカな音なんだろうと感じました。
明らかに、同じブルーノートのアルバムでも、いままで聴いたサウンドとの肌触りは異質なものを感じる。
それは、どういうことかというと、楽器同士の距離感や、演奏に向かう熱量が、なんとなくクールというかよそよそしく感じられたんですよね。
たとえば、ジャズ・メッセンジャーズの演奏のような「熱気」や「濃密さ」は希薄で、むしろ楽器間にスカスカと隙間風が吹いている感じというのかな? そういう違和感ほどではありませんが、異なる肌触りのようなものを感じました。
当時、大学生だった私は、ジャズ・メッセンジャーズの『バードランドの夜』や、グジョグジョに電気楽器がブレンドされた電気マイルスこそが「男の中のジャズ!」と思っていたので、
『ページ・ワン』の演奏から感じられる微妙なるヨソヨソしさには多少抵抗感を感じたものです。
しかし、今では、この楽器同士の距離感、良い意味でのスカスカ感が気持ちよく感じられますね。
特に、今日みたいな日には。
さらに7月、8月と、もっと気温も湿度も上がった日になると、それこそ、風鈴や金魚鉢やアサガオを鑑賞するような感覚で『ページ・ワン』の特に《ブルー・ボサ》や《リコーダ・ミー》を聴いています。
日本の夏にジョーヘンの『ページ・ワン』は良く似合います。
金鳥の夏、日本の夏、ジョーヘンの夏、ブルー・ボサの夏。
今後、夏に向けてこのアルバムを聴く頻度が少しずつ増えていくことでしょう。
記:2015/06/13
追記2
私が大好きな《リコーダ・ミー》をピアノとテナーサックスがデュオで演奏している動画。
Recorda Me - Piano/Sax Duo Dave Pollack
テナーサックスの音色が気持ち良い。
ちょっとだけアウトしてすぐ戻るピアノもお茶目。
テナーサックスの人も、「ちょっとアウト」⇒「だけどすぐ戻る」がなんかツボ。
記:2021/01/23