パリ・フェスティヴァル・インターナショナル/マイルス・デイヴィス
パリでのライヴ
キャリア初期のマイルス・デイヴィスを楽しみたければ『パリ・フェスティヴァル・インターナショナル』を真っ先にオススメしたいと思います。
1949年。
パリで開催されたジャズ・フェスティヴァル。
マイルスとピアニストのタッド・ダメロンによる双頭コンボによる演奏が収録されています。
何が良いのかというと、一にも二にも躍動感。
ジャズフェスということも手伝ってか、ライヴならではの盛り上がりと勢いが、このアルバムの中には封じ込められているのです。
マイルスのオープントランペットの音色のなんと溌剌としていることか。
若き日のマイルスの勢い溢れるトランペットプレイを楽しめるのと同時に、スローテンポの《ドント・ブレイム・ミー》などを聴くと、「考えて吹く」バラード・プレイヤーの萌芽がすでに認められるところが興味深いのです。
音は悪いが一級品
唯一の欠点をあえて挙げるのであれば、音質の悪さかな?
ビ・バップの香りが濃厚に残る演奏とあいまって、とてもザクザクと荒々しく感じるかもしれません。
しかし、このザクザクとした荒々しさが、かえって演奏から感じられる勢いを良い方向に増幅させているかのように感じられるのだから、不思議なものです。
むしろ、この演奏がツルッとした音質だったら、同じ内容でも演奏の魅力は半減していたかもしれませんね。
マイルス坊ちゃん
この演奏のエネルギー感と好対照な、若きマイルスのスイートな声もグー。
マイルス自らが曲名をアナウンスしているところがあるんだけれども、後年のトレードマークともいえる嗄れ声からは想像もつかないほど、マイルスの声が可愛いのです。
育ちの良いお坊ちゃんのような声ですね(実際、裕福な家庭に生まれたマイルスは育ちの良いお坊ちゃんだったのですが)。
また、アナウンスといえば、演奏のいたるところに被さるフランス語のアナウンスも効果的。
人によっては、このアナウンス、邪魔に感じるかもしれないけど、個人的には、このアナウンスはドキュメンタリーっぽいムードをかもし出しており、勢いのある演奏を効果的に彩っているように感じます。
若き日に訪れた最初の絶頂期
セントルイスの田舎からやってきたお金持ちのお坊ちゃま(=マイルス)が、必死に都会のヤサグレ男たちと同化しようと務め、その日暮らしのヤクザなジャズ屋さんたちから「腕」と「センス」を吸収。
精一杯培ってきた努力の成果をパリで披露。
そして、熱狂的な喝采。
「ボクには明るい未来が拓けている」
そのような声が若き日のマイルスのトランペットからは感じられるのです。
記:2015/01/04
album data
IN PARIS FESTIVAL INTERNATIONAL DE JAZZ (Columbia)
- Miles Davis
1.Rifftide
2.Good Bait
3.Don't Blame Me
5.Wah Hoo
6.Allen's Alley
7.Embraceable You
8.Ornithology
9.All The Things You Are
Miles Davis (tp)
James Moodey (ts) except#3
Tadd Dameron (p)
Barney Spieler (b)
Kenny Clarke (ds)
#1-4
1949/05/08 (Paris)
#5-9
1949/05/09,12,14,15 (Paris)