アット・シェリーズ・マン・ホール/ビル・エヴァンス
リヴァーサイド最終作
名ドラマーのシェリー・マンがオーナーを務めるライブハウスの名前は、「シェリーズ・マンホール」。
マンホール?
シェリーマンズ・ホールじゃないところが面白い。
マンのユーモアをそこはかとなく感じる。
ここに出演したビル・エヴァンスのライブの模様を収めたのが本作だ。
ジャケットが地味なためか、あるいは、参加ベーシストのチャック・イスラエルが、スコット・ラファロと比較すると地味な印象を受けるのか、あまり、このアルバムが話題にのぼることは多くない。
少なくとも私の周囲では。
しかし、これがなかなかなのだ。
まず、音が良い。
とくに、ラリー・バンカーのブラシの音がリアル。
『ワルツ・フォー・デビー』などのラファロ参加の演奏が録音されたヴィレッジ・ヴァンガードは、客がわいわいガヤガヤ、グラスがチーン!と良くも悪くもライブハウスならではの臨場感があるにはあるが、なんだか、誰もエヴァンスのピアノに耳を澄ましてないみたい、ちょっと可哀想かもしれない、なんて心優しい方はもしかしたら思うかもしれないけれども、本作はそんなことない。
マンホール、じゃなくて、シェリーズ・マンホールにやってきたお客様がた、キチンとエヴァンスのピアノに耳を澄ませています。
キチンと聴いております。
ま、ライヴハウスと、ホールの差といえばそれまでなのだけれども、演奏も落ち着き、客も落ち着き、聴いているこちらの気分も落ち着き、と、落ち着き三拍子のアルバムではある。
エヴァンス、リバーサイドでの最終作でもある本作。
誰もが知る勇名なスタンダード・ナンバーを中心に演奏されているが、選曲がオーソドックスなぶん、かえってエヴァンスが持つピアニズムがくっきりと浮き彫りになっている。
オリン・キープニューズは自分のレーベルでのエヴァンスの最後のアルバムは、「ライブ!」と決めていたようだが、どうも、私にとってのリバーサイドのビル・エヴァンスのイメージは、ライブ版の印象が強い。
もちろん、そうじゃないレコーディングも多いんだけれども、やっぱり、なんだかんだいってもラファロ参加のヴィレッジヴァンガード演奏のイメージが強いのでしょうな。
記:2009/03/13
album data
AT SHELLY'S MANNE-HOLE (Riverside)
- Bill Evans
1.Isn't It Romantic?
2.The Boy Next Door
3.Wonder Why
4.Swedish Pastry
5.Love Is Here to Stay
6.'Round Midnight
7.Stella by Starlight
8.All the Things You Are
9.Blues in F
Bill Evans (p)
Chuck Israels (b)
Larry Bunker (ds)
1963/05/30&31
"Shelly's Manne-Hole",Hollywood,CA