ショート・ストーリー/ケニー・ドーハム

      2021/12/27

ショート・ストーリー
Short Story
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動画レビュー

静かなケニーだけでは勿体ない

言い方悪いけど、スタティックな『クワイエット・ケニー(静かなるケニー)』ばかりを聴いて、「うーん、ドーハムいいねぇ、なんだか、こう、ワビサビを感じるねぇ」などとのたまっている御仁は、ふにゃチンだ。

猫を膝の上にのっけて、しみじみと縁側で梅昆布茶でも飲んでいるがよろし。

「いい天気だねぇ、しみじみしたラッパがイイねぇ~」って。

もちろん、『クワイエット・ケニー』は、いいアルバムだ。

ぽわ~っとした感じ、やわらかげで、しんみりとした暖かさがある。
なにより聴きやすいし、ドーハムもよく歌っている。

静かなるケニー

>>静かなるケニー/ケニー・ドーハム

しかし、このアルバムのドーハムの姿は、あくまで、ドーハムというトランペッターの一面しか切り取っていないこともたしか。

この一面と対極にあるドーハムの姿を切り取ったのが、スティープル・チェイスの『ショート・ストーリー』だ。

これも聴け!

『静かなる~』の次は、これも聴いてください。

ガツン!ときます。

このアルバムは、スティープル・チェイス・レーベルのものだが、このレーベルお馴染みのライヴハウスといえば、北欧はコペンハーゲンの「カフェモンマルトル」。

ここでケニーが繰り広げた「ジャズ純度100パーセント」の演奏が『ショート・ストーリー』には封じ込められている。

タフです。

テテ・モントリューやペデルセンをはじめとるするリズムセクションが強力だということもあるが、『静かなる~』で見せた表情とは、まったく違うエキサイティングなケニーの姿を確認できる。

まずは、1曲目の《ショート・ストーリー》からどうぞ。

10分の演奏時間などあっという間に過ぎ去ってしまうことだろう。

これでどうだ!

さらに《バイバイ・ブラックバード》も面白い。

奔放にメロディを歪め、自在に時間をコントロールするかのようなテーマ処理。

さすがドーハム!

さらに面白いのは、前半のテーマ、アドリブに比べて、後半の4バースでのケニーのほうが熱く、勢いづいているところ。

テテ・モントリューの情熱ソロに感化されたのかな?

熱い!
気迫に満ちた真剣演奏だ。

これ聴いて、「うーん、それでもやっぱり『静かなる』のケニーのほうがいいなぁ」

とおっしゃられる方は、やっぱり、ふにゃチンです(笑)。

『静かなる~』のスタティックな部分だけを好んでいるようでは、ジャズのおいしい部分をかなり逃しているような気がするし、もちろん、それはそれで構わないんだけれども、そういう人ほど、早々にジャズに飽きて、違う趣味に引っ越してしまう傾向があるんだよね。

それは、とてももったいない。

こちらも聴いて、トランペッター、ケニー・ドーハムの魅力を堪能しよう!

「切ない」ケニー、「力強い」ケニー。
両方あわせてケニー・ドーハム!

記:2010/05/26

album data

SHORT STORY (SteepleChase)
- Kenny Dorham

1.Short Story
2.Bye Bye Blackbird
3.Manha De Carnival
4.The Touch Of Your Lips
5.My Funny Valentine

Kenny Dorham (tp)
Allan Botschinsky (flh)
Tete Montoliu (p)
Niels-Henning Ørsted Pedersen (b)
Alex Riel (ds)

Recorded live at Montmatre Jazzhus, Copenhagen
1963/12/19

 - ジャズ