ソニー・ミーツ・ホーク/ソニー・ロリンズ&コールマン・ホーキンス
2021/02/05
2大テナー奏者、夢の共演
タイトル通り、テナーサックス奏者、ソニー・ロリンズと彼の大先輩であるコール・マンホーキンスとの共演盤だ。
ことの発端は、1963年7月7日年のニューポート・ジャズ・フェスティヴァルのステージ。ロリンズのカルテットにホーキンスがゲスト出演し、二人のテナーの巨人が共演したことがきっかけとなり、早くも8日後にはレコーディングをする運びとなっている。
もっとも、この2人の共演レコーディングは既に決まっていて、ニューポートでの共演は、このアルバムのためのリハーサルだったのかもしれないが、いずれにしても大物同士の共演であることは間違いない。
オヤジにたてつく息子?!
ご存知、ソニー・ロリンズにとってホーキンスは大先輩だ。
ロリンズは少年時代からホーキンスの大ファンで、少年の頃、寒い冬の日に、ホーキンスからサインをもらうために、自宅の前で彼の帰りを待っていたというエピソードは有名だ。
敬愛するホーク大先輩との共演で、では、ロリンズはどのようにオヤジにぶつかっていったか。
聴きようによっては、反抗期の息子が、正論を話すオヤジに喰ってかかっているように聞こえなくもない。
なんだか、オヤジが王道な話をするたびに「でもさー」「けどさー」みたいな感じに、いちいち反抗しているかのゆおうにも聞こえる。
しかし、この時期のロリンズは、雲隠れ中にウィリアムバーグスブリッジで練習をしていた成果を『橋』というこれまでとはまったく違うテイストの作品で発表したり、『アワ・マン・イン・ジャズ』では、オーネット・コールマンの盟友であるドン・チェリーと共演してフリージャズの方向に接近したり、『イースト・ブロードウェイ・ラン・ダウン』でサックス本体からマウスピースを外して鳴らすなど新しい試みている。
このように、ある意味オヤジからうけた多大なる影響と、偉大すぎるオヤジの重力圏から、もがき脱出しようとしていた時期ということもあり、ロリンズにとっては敬愛するホーキンスオヤジに対しては、ヘンにゴマを摺ったりコビを売って寄り添おうとするよりも、日々刻々と進化してゆくジャズシーンの中で切磋琢磨する自らの「ありったけの今」を出そうとしたのだろう。
つまり、この演奏は新旧テナーサックス奏者同士の会話であり交感だ。
よって、演奏としてのまとまりや整合性を求めてはいけない。むしろそれを求めてしまったら、まるっきり聴けなくなってしまう恐れがある。
それこそ反抗期の息子が「反抗のための反抗」をしているだけに終始しているように感じてしまうかもしれない。
しかし、さにあらず。
これはあくまで、2人のテナー・タイタン(巨人)がそれぞれの「今」をサックスを通じて吐露しあっている現場に立ち会うための音源だと私は解釈している。
とはいえ、この共演、もう少し前に実現していたら、オーソドックスなハードバップのスタイルのロリンズとホーキンスのアンサンブルが聴けたのになという残念な気持ちはある。
そして、50年代の半ば、つまりロリンズが『サキソフォン・コロッサス』を録音していた頃に共演盤を出していれば、かなり聴き応えのある王道路線の内容になっていただろうなと期待するのは、無い者ねだりというものだろうね。
ちなみに、解説するまでもないとは思うが、ホーキンスのテナーが聴けるチャンネルは向かって左、ロリンズは右となっている。
記:2019/08/29
album data
SONNY MEETS HAWK (RCA)
- Sonny Rollins & Coleman Hawkins
1.Yesterdays
2.All The Things You Are
3.Summertime
4.Just Friends
5.Lover Man
6.Al McKies
Sonny Rollins (ts)
Coleman Hawkins (ts)
Paul Bley (p)
Bob Cranshaw (b) #1,2,5
Henry Grimes (b) #3,4,6
Roy McCurdy (ds)
1963/07/15 #1-2,5
1963/07/18 #3-4,6
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