スウィンギン・ザ・トゥエンティーズ/ベニー・カーター
2018/09/11
キャノンボール的?
このハッピーなフィーリング、ブライトで明るいアルトの音色は、やっぱりキャノンボール・アダレイを思い出しちゃうんだよなぁ。
なんてことを久々にベニー・カーターの『スインギン・ザ・トゥエンティーズ』を聴きながら思っていた。
しかし、いや、まてよ、20年代から活躍しているカーターのほうが、キャノンボールよりもはるかに先輩ではないか。
モダンジャズを中心に聴いていて、前の時代に遡った時によくある倒錯現象ですね。
ということは、パーカー派の1人のキャノンボールも、初期のフレージングはパーカー的でも、音符には表せないフィーリングの部分では多分にベニー・カーターの影響を受けているはずだ、と思うにいたった。
実際はどこまでどう影響を受けているのかは分からないけれども、澄んだアルトサックスから迸る「陽」のオーラは、やはり両者どこか共通のものがある。
トランペットもハッピーフィーリング
面白いのは、ベニー・カーターはトランペットも吹くが、トランペットの演奏もアルトの雰囲気をそっくりそのまま移植したかのような、やはり明快な音色とフレージングが耳に残る。
つまり、楽器の特性に縛られることなく、この人の持つ根っこの部分が、うまく出ているのではないかと。
この「ハッピー・フィーリング」に拍車をかけているのは、アール・ハインズのピアノだろう。
ハインズはスイング時代のベテランピアニスト。
ベテラン同士が、平易に明快に粋な演奏を繰り広げるこのアルバムは、気軽に聴けてなおかつ奥の深い1枚だ。
しかし、今、書きながら気が付いた。
スイング時代の大物の録音の多くは、気軽に聴けて、なおかつ奥が深いものばかりだなぁって。
ビ・バップ以降のモダンジャズよりも、よりエンターテインメントの要素の強かった時代のスタイル。
しかし、どんな芸も極めれば、奥深い味わいが出る。
だからこそ、平易だろうが難解だろうが、その道の達人の表現内容は常に傾聴に値するのだ。
特に長らく活動し続けてきた人の音は。
平易で明快ながら奥深いベニー・カーターの名人芸を今一度見直そう!
album data
SWINGIN THE 20'S (Contemporary)
- Benny Carter
1.Thou Swell
2.My Blue Heaven
3.Just Imagine
4.If I Could Be with You (One Hour Tonight)
5.Sweet Lorraine
6.Who's Sorry Now?
7.Laugh, Clown, Laugh
8.All Alone
9.Mary Lou
10.In a Little Spanish Town
11.Someone to Watch over Me
12.A Monday Date
13.Who's Sorry Now?" [alternate take]
14.Laugh, Clown, Laugh [alternate take]
15.All Alone [alternate take]
Benny Carter (as)
Earl Hines (p)
Leroy Vinnegar (b)
Shelly Manne (ds)
1958/11/02