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ミスティ・サーズデイ/デューク・ジョーダン

ミスティ・サーズデイ/デューク・ジョーダン


Misty Thursday

ピアノトリオで十分だった?!

ギターで参加しているチャック・ウェインには申し訳ないんだけど、このアルバムの率直な感想は、「ピアノトリオでよかったんじゃ?!」だ。

みずみずしいジョーダンのタッチ、それに拍車をかけた爽やかさを演出しようという配慮だったのかもしれないけれど、どうも、エコーが少々かかりすぎのギターと、いささか跳ね気味に弾かれるギターの存在が邪魔に思えてしまう瞬間がいくつもある。

特に、曲によってはギターのソロが、まるでハワイアンに聞こえてしまうものもあったりで、であれば、ジョーダンのピアノだけでも、十分に潤いのある音世界を描けたんじゃないかと思う。

サム・ジョーンズっぽくないベースの音

それと、もうひとつ不満を挙げるとしたら、サム・ジョーンズのベースの音が、電気臭いんですよ。

同じスティープル・チェイスから出ている『ダブル・ベース』においてのサム・ジョーズンのベースの音は、ガッツにあふれた気骨のある音で録られていたにもかかわらず、本当に同じレーベル? 同じベーシスト?と思ってしまうほど、ベースの音色が違う。

ま、この時代(70年代)のウッドベースの録音は、胴体の「響き」よりも、弦の「鳴り」を中心にピックアップしているものが多いので、これはこれで「時代の音」なのかもしれないが、せっかくのガッシリとした骨格を持つサム・ジョーンズのベースの音が、ふにゃりと曖昧な輪郭をした低音に変貌してしまったことは、かなり惜しい。

もちろん、だからといって、この時代のピックアップで弦の音を中心に録音する傾向が悪いというわけではない。
むしろ、これを積極的に活用したベーシストもいるにはいた。
ロン・カーターやスタンリー・クラークなど。

弦高を下げれば、それだけベースのボディの響きが弱くなり、アタックの強い音が出なくなる。その上、音量も出なくなる。

しかし、弦高を下げると、それだけ押弦が楽になり、左手は縦横無尽に指板の上をかけめぐることが出来る。
しかも、ピックアップ(マイク)が弦の音を拾ってくれるから、ボリュームのことを気にせずに演奏に専念できる。
このようなことから、主に音数の多いテクニカルなプレイをするベーシストにとっては、録音方法の変化は歓迎すべきことだったのかもしれない。

高い弦のベースで、高い音圧のまま、パコパコ早弾きされても、聴いているほうも何を弾いているのか分かりにくくなる上に、なによりベーシスト本人の指の負担が並大抵ではなくなる。特にハイポジションにいけばいくほど弦が高くなり、押さえるだけでも一苦労な上に、弦高が高くなればなるほどピッチ(音程)が取りにくくなってしまう。

だから、フィッシャーマンなど、弦の近くにピックアップをセットし、ラインでPAやアンプやミキサーに音を送って録音するという手法は、たくさんの音を弾きたいベーシストにとっては有難いテクノロジーの進歩だっただろう。

しかし、サム・ジョーンズのようなベース本体の「fホール」から発せられる空気の震えがサウンドキャラクターのベーシストにとっては、このアルバムのような録音は良い方法とは言いがたい。

チャールス・ミンガスやオスカー・ペティフォードのように、「低音の音圧」が、重要なアイデンティティとなっているベーシストの音色を「にゅいーん、にゅいーん」と電気的なニュアンスがブレンドされた状態で録音されたらどうなる?

それと同じことなのだ、サム・ジョーンズの音色の変化は。
サム・ジョーンズ本人は、プレイバックを聴いたのだろうか?
そして、サム・ジョーンズ本人は、録音された自分の音をどう感じたのだろうか?

案外、「こういうのもアリ!」と喜んでいたりして。

おすすめナンバー

繊細なデューク・ジョーダンのピアノが楽しめるアルバムではあるし、美しいナンバーが多いことがこのアルバムの売りなのだろうが、いささか「ドス」のような迫力に欠けることも確か。

そう感じる方は、《ナイト・トレイン・フロム・スネッカーステン》あたりを聴いてみてはいかが?

《朝日のように爽やかに》を彷彿とさせるマイナー調のナンバーが、これまでの爽やかチックな空気を、一掃とまではいかないが、ほんのりとダークに変えてくれるかもしれない。

とはいえ、ギターソロはハワイアンチックなのだが……(苦笑)。

やっぱり、ピアノトリオでよかったのでは?

記:2013/04/10

album data

MISTY THURSDAY (Steeple Chase)
– Duke Jordan

1.There’s A Star For You
2.Hymn To Peace
3.Misty Thursday
4.Night Train From Snekkersten
5.Lady Linda
6.I’m Gonna Learn Your Style

Duke Jordan (piano)
Chuck Wayne (guitar)
Sam Jones (bass)
Roy Haynes (drums)

1975/06/30 N.Y.C.

YouTube

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