パウエル奏でるニューヨークの秋
2021/02/12
バド・パウエル、ブルーノートの『アメイジング・バド・パウエル vol.2』。
『vol.1』とともに長年愛聴しているアルバムです。
ただ、このアルバムのレビューなどで、もっとも評価されているナンバーは《グラス・エンクロージャー》であることが多いんですよね。
私、どうもこの曲、嫌いじゃないんだけれども、構成のメリハリがあり過ぎて、曲としては良い出来なんだけれども、演奏としては別に当時のパウエルとしては「ふつー」なんじゃないかなぁ、なんでそんなに皆、絶賛してるんだろうなぁと長年疑問を感じ続けています。
厳かなクラシックの小品みたいで、あんまりジャズっぽさを感じないんですよ。
短いナンバーながらも、曲の構成が比較的、山あり谷ありなのですが、この山あり谷ありがかえってクサいというか、演歌チックというか。
だから、今でもあまり好んで聴く曲ではないんですよね。
別に作曲面で構成やメリハリに凝らずとも、パウエルは表現力のカタマリのようなピアニストですから、たとえば、このアルバムでいえば、《ニューヨークの秋》のような「普通のスタンダード」を弾くだけでも、十分に厳しい芸術性をたたえたパウエルワールドが展開されるているんですよ。
いや、むしろ、誰もがトライする曲なだけに、かえってパウエルの表現が凡百のピアニストとは違うということが、相対的に見せ付けられる、というか。
活動初期のパウエルの凛とした厳しいタッチが好きな私としては、《ウン・ポコ・ローコ》や《テンパス・フュージット》のような自作ナンバーももちろん好きですが、むしろ《ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド》や、このアルバムに収録されている《ニューヨークの秋》のように、誰もが演奏する曲を、他の誰でもないパウエルの世界に塗り替えてしまっている演奏のほうにパウエルらしい魅力を感じるのです。
記:2016/01/17
▼レビューはこちらです
ジ・アメイジング・バド・パウエル vol.2/バド・パウエル