アス・スリー/ホレス・パーラン

      2023/08/05

この曲1発!

一曲目が、このアルバムの魅力を決定していると言っても過言ではない。
タイトル曲の《アス・スリー》だ。

眩暈がするほど、ヘヴィーでグルーヴィ

使用されるコードが「Fm」一発というシンプルな構造のこの曲は、おそらく、ひたすらグルーヴするだめだけに作られたに違いない。

アル・ヘアウッドの殺気だったブラシ。
弦が悲鳴を上げているようなアタックの強いベース。
たたみかけるようなピアノ。

眩暈がするほど、ヘヴィーでグルーヴィな演奏だ。

ジョージ・タッカーのベースと、アル・ヘアウッドのブラシは、コンビネーションが抜群。

グイグイと強力にリズムを牽引してゆく。

ホレス・パーランのピアノもアーシーで、ダークで、真っ黒なノリ。

2分55秒目あたりから出る、パーランの必殺・リズムずらしが最高だ。

独自の奏法

独特なフィーリングと強烈なノリを持ったピアニスト、ホレス・パーラン。

彼のピアノは、右手の薬指と小指が動かないゆえに編み出された独自の奏法で弾かれている。

5歳の時に小児麻痺を患い、右手の二本の指が動かせなくなってしまったパーラン。

それでも懸命にピアノのレッスンを続け、ピッツバーグ音楽大学とカーネギー大学に通った。

動かない指をフォローするため、独自の奏法を編み出したパーラン。

左手でメロディを弾いたり、動かすことの出来る残りの指を総動員させ、豪快な和音でクライマックスに導く方法も、彼ならではだ。

ちょい悪ジャズ

私はこのアルバム、《アス・スリー》一曲だけを聴くためのアルバムとみなしていたので、他の曲はあまり熱心に聴いたことがなかった。

しかし、先日、他の曲もキチンと聴いてみたら、《ウォーキン》の重たく気だるい演奏が良かった。

それともう一つ。

《ウェイディン》の重たく湿った演奏の虜にもなっている。

このアルバムを聴く新しい楽しみが増えたので嬉しい。

ドスンと重たく、時折放たれるギラリとした殺気。
これぞジャズ、これぞ「ちょい悪」な大人向けのピアノトリオでしょうと、べつに『レオン』のモデルのジローラモさんに似合うとは思わないけれども、どことなく影がつきまとう「大人の男」が纏うタフでハードボイルドな雰囲気にピッタリな演奏の連続なのだ。

とにもかくにも、このアルバムの虜になったら、もう黒い世界からは足を洗えなくなること必至です。

記:2002/05/08
加筆修正:2016/05/09

album data

US THREE (Blue Note)
- Horace Parlan

1.Us Three
2.I Want To Be Loved
3.Come Rain Or Come Shine
4.Wadin'
5.The Lady Is A Tramp
6.Walkin'
7.Return Engagement

Horace Parlan (p)
George Tucker (b)
Al Harewood (ds)

1960/04/20

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