じんわり泣けてくるぜ!パーラン流のジャズボサ《シンシアズ・ダンス》
一瞬ピアソン、じつはパーラン
iTunesがランダム選曲して流れ出した曲は、ジャズボサ調のナンバー。
きらびやかで微オシャレなムードの曲調で、あれれ、デューク・ピアソンってこんな感じの曲も演奏してたっけ?と思いながらピアノの音に耳を澄ますと、ピアソンの丸っこい端正さとは異なる、なんというかカッコ良いバラつきのあるシングルトーンなのね。
ん?これってパーランのピアノっぽいよなと思ってクレジットを見ると、やっぱりホレス・パーラン。
アルバムは『ブルー・パーラン』だった。
曲は《シンシアズ・ダンス》。
ダークなアルバムだという先入観
特に『ブルー・パーラン』というアルバムは、ミンガスの《グッドバイ・ポークパイハット》や、モンクの《モンクス・ムード》のように、メランコリックで重たい曲が収録されており、個人的には、このようなナンバーに比重を置いて聴いていたため『ブルー・パーラン』は、ジャケットの色彩どおり、ダークな重みのあるアルバムというイメージが頭の中を占めていたようだ。
特に1曲目の《グッドバイ・ポークパイハット》の印象が強烈すぎて、この演奏がこのアルバムの印象を決定づけているといっても過言ではないからね。
だから、明るい曲調の《シンシアズ・ダンス》は、忘却の彼方だった。
重たく黒いピアニスト
ホレス・パーランといえば、個人的には凄みのある黒いピアノを弾くピアニストだという認識だった。
いや、こういう認識を持っていた人って、たぶん私だけではないと思う。
奄美大島の音のソムリエ・高良俊礼さんも、パーランを聴いて「ジャズは不良の音楽だ!」と書いているように、どちらかというと、我々ジャズ聴きが無意識にパーランに求めているのは、拡散的な煌びやかなピアノよりも、一点に収れんしてゆく重力のあるピアノの音粒だった。
>>ジャズは不良の音楽だ!~ホレス・パーランの『アス・スリー』
ブルージー、というよりは、アーシーなテイストの加わった重み、とでもいうのかな?
しかし、そればっかりではないんだよね~ということを教えてくれるのが、『ブルー・パーラン』の《シンシアズ・ダンス》なのであった。
後半に醸し出てくるパーランらしさ
高音を多用しているからなのかな? 時折ゴツゴツした音塊も飛び出すのだけれども(特に後半になればなるほど)、なんだか刹那的なまばゆい光を照射されているかのような気分になり、なんだかじわりと泣けてくるんだよ。
曲調が無防備に明るいだけに、なおさら。
でも、終盤になるにしたがって、だんだんパーランの「本音」のようなもの、
つまり、ガツンと重たい和音のクラスターが徐々に出始める。
「ああ、やっぱりパーランじゃん」って妙に安心している自分がいたりもする。
一枚のアルバムの印象を2~3曲の印象で決めつけていた気のある自分自身をちょっぴり反省する出来事でもあった。
記:2017/10/31
●参考記事
>>ブルー・パーラン/ホレス・パーラン