フォー・ジャンゴ/ジョー・パス

   

ジャンゴとクリスチャン

ギタリスト、ジョー・パスの原点はジャンゴ・ラインハルトにあり。

12歳の頃、少年ジョー・パスはレコードが擦り切れるほどジャンゴのレコードを繰り返し再生し、彼のギターのコピーに明け暮れたという。

それから20数年後。

ジョー・パスは、変わらぬジャンゴへの思いを一枚のアルバムに作り上げた。

それが本作の『フォー・ジャンゴ』だ。

20代のほとんどを麻薬癖を断ちきるための療養所生活に費やしてたパスだが、それでもギターは継続して練習は続けていた。

ジャズ界に復帰した彼が、念願のジャンゴに捧げたアルバムをレコーディング。

パスが35歳の時だ。

このアルバムは、一言でいえば、じつに渋、大人の味わいといえるだろう。

ジャンゴ・ラインハルが愛奏したナンバーほか、タイトル曲でもあるパスのオリジナル曲や、MJQの《ジャンゴ》まで、ジャンゴに捧げるコンセプトとなってはいつつも、ジャンゴのコピーではなく、ジョー・パスならではの表現で、敬愛するジャンゴに捧げる内容となっている。

このアルバムが好きなあるギタリストは「こんな境地に至るには一生かかるか、一生かかっても無理」と漏らしていたが、圧倒的な器楽的テクニックが随所に封じ込められていつつも、それが露骨になることは一切ない。

きちんと「聴かせる」だけの音楽的バランスと、しなやかなセンスが全体を覆い包み、ムーディでありながも、スリリングな緊張感もたたえている。

この絶妙なバランスがたまらない。

そして、このアルバムを何度か聴き、フレーズに耳を寄せると、意外なことにチャーリー・クリスチャンの影響も色濃く受けているということに気付く。

この力強い躍動感は、肉感的なジャンゴのギターをベースにしつつも、フレーズの構築などは、かなりクリスチャンのギターを研究した節を随所に感じることが出来るのだ。

このような思わぬギタリストにも遺伝子を残しているところは、さすがチャーリー・クリスチャン。
「モダン・ジャズギターの父」と称されるだけのことはある。

記:2011/03/30

album data

FOR DJANGO  (Pacific Jazz)
- Joe Pass

1.Django
2.Rosetta
3.Nuages
4.For Django
5.Night And Day
6.Fleur D'Ennui
7.Insensiblement
8.Cavalerie
9.Django's Castle
10.Limehouse Blues

Joe Pass (g)
John Pisano (g)
Jim Hughart (b)
Colin Bailey (ds)

1964年録音

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