グラントスタンド/グラント・グリーン
素晴らしいジャケット
このアルバムが録音された日は私の誕生日と同じだということに気が付いた。
そのような個人的な偶然の一致もあり、グラント・グリーンは大好きなギタリストなのだけれども、さらに輪をかけて大好きというか思い入れの深いアルバムが、この『グラントスタンド』なのです。
ジャケットもいいよね。
グリーンが浮かべる陶酔の表情と、薄青いカラー。
同じブルーノートの作品『フィーリン・ザ・スピリット』も、グリーンの陶酔の表情が素晴らしいジャケ写なのだけれども、この『グラントスタンド』は、それに加えてアングルも良いですね。
酔いに染みる
ギターのヘッドからはみ出る弦もなかなか良い感じです。
個人的にこのアルバムの中で好きなのは、《マイ・ファニー・ヴァレンタイン》だ。
これ、染みるのよ。
秋の夜長に、たとえばゴールデン街の飲み屋や歌舞伎町の狭いバーなどでかかっていると最高。
深夜2時とか3時ぐらいになると、すでに2~3軒は飲み屋をハシゴしている状態であることが多いのですが、こういう時って、私の場合は気持ち良く酔いが回っていることが多い。
このような状態で、目の前のグラスや灰皿をじーっと見つめていると、時間の流れが少し遅く感じることがあるんですね。
じーっと目の前のものを酔っ払った頭で聴くジャズは、テンポが速いものよりもスローテンポの演奏が良いですね。
なぜなら、フレーズの一音一音をじっくりとかみ締めることが出来るから。
だからこそ、粒立ちのハッキリとしたシングルトーンが暖かいグラント・グリーンのギターを耳で追いかけるのが良いのです。
スローテンポの《マイ・ファニー・ヴァレンタイン》なんかは、まさに心地よく酔った耳がフレーズを追いかけるにはうってつけの演奏で、まろやかでコクのあるグリーンのシングルトーンのフレーズがとても気持ち酔い、いや、気持ち良いのですね。
ゆっくりと、じっくりと、噛み締めながらギターの弦がふるえる音に浸ることができます。
この音を酩酊した状態で耳で音を拾うように追いかけている状態が、個人的には至福のひとときなんですね。
グリーンのギターに色を添えるジャック・マクダフのオルガンも気持ちが良いです。 音がすぐに減衰してしまうピアノよりも、こういうゆったりしたテンポの《マイ・ファニー》には、音が伸びるオルガンがピッタリですね。 憂鬱すぎない演奏テイストも素晴らしく、ユセフ・ラティーフのフルートも柔らかく耳をくすぐってくれます。 やはり夜が似合うアルバムです。 それも深夜。 同じギタリストのケニー・バレルの『ミッドナイト・ブルー』(Blue Note)が、25時59分までの「夜中」が似合うとすると、グラント・グリーンの『グラントスタンド』は、26時以降の「深夜」が似合うアルバムですね。 記:2015/11/20 GRANTSTAND (Blue Note) 1. Grantstand Grant Green (g) 1961/08/01album data
- Grant Green
2. My Funny Valentine
3. Blues In Maude's Flat
4. Old Folks
5. Green's Greenery
Yusef Lateef (ts,fl)
Ben Tucker (b)
Jack McDuff (org)
Al Harewood (ds)