雑だがなぜか耳を惹く『ナイト・フード』のジョン・デイヴィスのピアノ

   

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ナイト・フード

ジョン・デイヴィスのピアノが好きだ。

ものすごいテクニシャンというわけでもないのだが、どこか惹きつけてやまない魅力が彼のピアノにはあるのだ。

いちばん好きなのは、ジャコ・パストリアスとブライアン・メルヴィンの『ナイトフード』というアルバムの《ザ・ウォーリアー》という曲の彼のピアノ(ピアノの音色をシミュレートしたキーボード?)だ。

ジャコ思いの良いお友達でもあったドラマーのブライアン・メルヴィンが、ヤク中のジャコになんとか仕事をしてもらおうと画策した『ナイトフード』というアルバム自体、私は大したアルバムだと思ってはいない。

評論家の岩浪洋三先生は絶賛だが(笑)。

個人的な好みはさておき、ヤク中のジャコも突然調子がよくなったり悪くなったりで、ムラのあるプレイ内容を拾遺した内容ゆえ、やはり全体的な統一感には乏しく、「ジャコがベースを弾いた曲をなんとか寄せ集めて1枚にしました」感の強いアルバムだから、なんとなく全体からは「雑」な風情が漂っていることは否めない。

しかし、「各論」で見るとよい演奏もあり、いや、よい演奏とはいえないかもしれないが、個人的には惹かれる曲もある。

それが《ザ・ウォーリアー》。

なんだか、冗長なジャムセッションの延長に過ぎない内容なのだが、ジョン・デイヴィスの雑ではあるが、元気よくはじけたピアノと、アタックの強いピアノの音色もあいまってか、ポキポキしたB級ハンコックなテイストがなんとも良い感じなのだ。

同じく、ジャコとメルヴィンとジョン・デイヴィスの3人が組んだトリオアルバム『スタンダーズ・ゾーン』がある。

ジャコが弾く4ビートのベースをたっぷり堪能できるという点では貴重なアルバムではあるが、やはり全盛期を過ぎ下り坂になってしまったジャコのベース(それでも聴かせる部分はあるが)と、相対的にみて、かつてのジャコとの共演者のレベルからすると、ちょっと物足りないドラムとピアノのアンサンブルは、やはり全体的にパンチがなく弱い。

もっとも、ジャコヒストリー全体の中から俯瞰した中では位置づけの低いアルバムかもしれないが、個人的な好みをいえば、やっぱりこのアルバム嫌いではないんだなぁ。

それはジョン・デイヴィスのピアノが聴けるから。

ただ、このアルバムのジョン・デイヴィスのピアノは、《ザ・ウォーリアー》のピアノと九レベルと「よそいき感」が強く、ちょっと澄ましているところもあるので、やっぱり私は、《ザ・ウォーリアー》の雑だが勢いのあるピアノこそ彼の最高傑作だと勝手に思っている。

記:2009/03/13

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