リッチーの兄、バド・パウエルの曲を取り上げたブラウン=ローチ・クインテット
パリの並木道
ピアニスト、バド・パウエルはフランス旅行をしたときの思い出を《パリジャン・ソロウフェア》という曲にしました。
これはブルーノートの『アメイジング・バド・パウエル』に収録されています。
演奏時間は短いですが、なかなか優雅な気分にさせてくれるナンバーです。
時折、絶頂期パウエル特有の閃きを感じさせる凄いフレーズも織り込まれながらも、晴れ晴れとした気分にさせてくれる演奏です。
このナンバーを印象的なアレンジでカバーしたのが、クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテットです。
このクインテットには、バド・パウエルの弟、リッチー・パウエルがピアニストとして参加していました。
レパートリーに加えたのは、弟・リッチーの進言なのか、それともパウエルとこの曲を一緒に録音したマックス・ローチの提案なのかはわかりませんが、とにもかくにも、ブラウン=ローチ・クインテットは印象的な演奏を繰り広げています。
アルバムは『クリフォード・ブラン・アンド・マックス・ローチ』。
速めのテンポ。
ガーシュウィン作曲の《パリのアメリカ人》の旋律をテーマに引用したり、ブラウニー(クリフォード・ブラウン)は、《ラ・マルセイエーズ》を引用したり、リッチー・パウエルは、ブリッジで《メキシカン・ハット・ダンス》を引用したりと、様々な曲の一部を織り込み、パウエルの情景スケッチ風の曲に、より立体的な陰影を与えています。
この時、加入したばかりのテナーサックス奏者、ハロルド・ランドに花を持たせる配慮なのか、クリフォード・ブラウンは彼を最初にアドリブをとらせ、次いで自分がトランペットでソロを繰り広げます。
自分の兄が作った曲が、よりゴージャスかつ楽し気なアレンジの演奏に生まれ変わり、その演奏に参加もしているリッチー・パウエルは、きっと嬉しかったんじゃないかと思います。
天才ピアニストとして兄・バドのほうばかりが注目されがちではありますが、リッチー・パウエルのテクニカルかつ手堅いピアノも傾聴に値すると思います。
同じスタイルのピアノを弾きながらも、この両者の評価を分かつものは、やはり天才的な閃きと、ある種のヤバさをもたたえているか否かなのかもしれません。
記:2020/03/04