アップガンシードラゴン制作記/タミヤ 1/35アメリカ強襲揚陸兵車

      2021/02/20

動画もアップしています。

汚しにメリハリ

「情報量」という言葉に惑わされて、作ったプラモには満遍なく汚しをかけていた私。

たしかに情報量が多い方がリアルに感じることは事実ですが、だからといって、隅から隅まで汚れているのってどうよ?と最近は思うようになってきました。

もちろん、チッピングやドライブラシ、ピグメントなどを用いた華麗なる(?)ウェザリングをされているモデラーの作品はSNSや動画でたくさん拝見しており、いつも見惚れています。

特に、細部まで徹底的に考え抜かれたウェザリングの作品を見るたびに、すげー、俺には無理だといつも思っています。

なにしろ、時間がものすごくかかりそう。

飽きっぽい私は、時間がかかる作業って苦手なんですよね。

ホイホイ組み立てて、さっさか塗って、どんどん完成させていきたい。

だから、ミグ・ヒメネス氏やらいだ〜Joe氏のような徹底的に汚された作品は、自分もこういう作品を作りたい!と思うのと同時に、「時間がかかりそう、時間がかる作業は俺には無理!」といつも思ってしまうんですね。

昔はフランソワ・バーリンデンやシェパード・ペインの写真集・本でため息をつき、最近では、以下の本のページをめくりながらため息をついています。

しかし、想像やアイデアというのは「無理だ!」「失敗した!」という思いからスタートするもんなんですね。

で、ふと閃いたのが、「あっさり汚し」。

しかし、ただ平均的にスミ入れして、ドライブラシをかけるのではありません。

メリハリをつけて汚すということです。

均一に汚くするのではなく、キレイなところと汚いところをハッキリさせる。

具体的には、奥まったところやメカや道具類がゴチャゴチャしていることころはキツめに汚し、平滑な面のところはあまり汚さない。

これ、工事現場のブルドーザーなどの建機や、道路を走っているトラックを見ればわかると思うのですが、足回りなど良く使われているところは泥、油、ヘコミ、退色など汚れの要素が多いです。

その反面、「安全第一」とか、「●●建設」と書かれたボディの箇所はピカピカだったりします。

汚れていたとしても、泥を全体にかぶっていないかぎり、隅から隅まで満遍なく汚れていることは滅多になく、一部アクセントとして汚れが目立つところがいくつかある程度で、全体的には比較的「汚くない」車両の方が多いんですよね。

いわゆる「粗と密」というやつです。

粗密な車両、シードラゴン

汚れが集中した箇所に汚しを集中させ、あまり汚れていないところはあまり汚さない。

このコントロールがうまくいけば、全体を汚す手間と時間がカットできるかもしれないという「ラクをしたい心」を満たすことが出来る上に、あわよくば「リアルに見えるかもしれない」という副産物もゲットできるかもしれない。

実際、最近作ったブロックヘッドやチャレンジャーは、この考えを実践しています。

表面的な装甲の汚しはほどほどにし、関節部やエアダクト、隅っこ、工具が密集しているところなどには様々な色をスミ入れしたり、ウォッシングをしたりしています。

ガンプラのMG(マスターグレード)で言えば、フレームはガシガシに汚すけど、外装はあまり汚さないという考えに近いかもしれませんね。

ただ、上記チャレンジャーなどの塗装は、あくまで頭の中の仮説をボンヤリと実行しただけなので、もっと極端に実験できないかな?と思ってセレクトしたのが、タミヤの1/35、アメリカの強襲揚陸兵車・アップガンシードラゴンなのです。

なにしろ、平面な箇所が多くカステラの箱のようにノッペリしたボディです。

しかし、ノッペリした箇所もあれば、様々なカタチが入り組んだ箇所もある。

まさに疎密(粗密)を体現しているかのような造形なんですね。

同じことは同じくアメリカのM1戦車やヨーク対空砲にもいえることですが、これらの車両はすでに作っているので、できれば別な車両でトライしたいと思った時に思いついたのがアップガンシードラゴンだったのですね。

あっさり汚しのシードラゴン

で、早速作りました。

船に履帯(キャタピラ)がついたような水陸両用車です。

箱の中は、こんな感じ。

パーツを並べてみました。

ワイヤーとなる紐に少々遊びを入れて、組み立て完了。

ミッドナイトブルーでシャドウを吹いた後に、ダークイエローを吹きました。
クレオスのラッカー系です。

ちょっとメリハリがつきすぎてしまった上に、色味が濃いかな?

この時点からして、すでにクドいですね。

なので、フラット感の強いタミヤアクリルを上塗りすることにしました。

XF59のデザートイエローを吹き、さらにデザートイエローにフラットホワイトを加えたものを水でシャバシャバに薄めて(水溶きアクリル)、全体に吹き付けました。

タミヤのアクリル塗料に水を混ぜると、さらにフラット感が増すので、乾くとかなりマットかつガビガビな感じになってくれます。

このフラット感は、「潤いが足りないぜ!」と感じる人もいるかもしれず、好き嫌いが分かれるところでしょうが、ガンプラはともかく、戦車などのAFVモデルにはしっくりくるのではないでしょうか?

デカールを貼りました。

そして、機銃やリュックやスコップなどの細部を塗り分け、あとは油彩のバーントアンバーをメインに、集中して汚したいところは、複数のMr.ウェザリングカラーで汚しをかけました。

そして、仕上げは、油彩のアイボリーホワイトで全体を軽くドライブラシをかけて完成!

かなりアッサリしています。

その代わり、ハッチなど物体が集中している箇所は、バーントアンバーのほか、ステインブラウンや、カドミウムオレンジ、フィルタリキッドバイオレットなどを微量に溶剤に加えて、汚しを重ねています。

ノッペリとした車両の表面は、雨や海水や風に流されてしまうものですから、平滑な面は「ツルリとしているね」くらいが丁度良いのかもしれません。

そのかわり、雨や海水や風に流された汚れは隅っこに溜まりますから、窪みなどのスミ入れは異なる色で複数回スミ入れをします。

ま、それでも、もう少し汚しても良かったかもしれませんね。

なんだか、まだ1回も海に入ったことがない新車みたいです。

バド・シャンクやカール・パーキンスなどのウェストコースト・ジャズを聴きながらウェザリングをしていたので、アメリカ西海岸の陽光の下で活躍する車両っぽくなってしまったのかも。

予想通りの手応えは得られたものの、やっぱりちょっとノッペリし過ぎな感じもしたので、取ってつけたように、ワザとらしいサビ表現をバーントシェンナで付け加えました。

2つ目ライトは、ランボルギーニ・チーターを彷彿とさせます。

車体上面のゴチャゴチャしたところと、車体側面の、なーんもないフラットな面との対比が出ていれば良いのですが。

先日作った英国戦車チャレンジャーと並べてみました。

「面は汚さず・奥は汚す」コンビですね。

ついでに、これもまた最近作った「究極のシャコタン戦車」JS3(スターリン3型)とも並べてみました。

このスターリンも、汚しは控え目ですが、まだ「面は控え目、密は多め」は徹底していません。

数年前の記事を読むと「厚塗り上等!筆塗り100回!」などと息巻いていましたが、最近は「ひたすら足し算」的な塗装よりも、「いかに色数少なくそれっぽく見せるか」の方に考えがシフトしてきているようです。

>>HGCEフォースインパルスガンダム 1/144制作レポート

ジャズでいえば、「シーツ・オブ・サウンド」のジョン・コルトレーンから、音を節約して印象的な空間作りに腐心するマイルス・デイヴィス的な発想へとシフトしている感じ?

経験値とともに、作風やアプローチも変わってくるものですね。

また元に戻るかもしれないけど……。

記:2021/02/08

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