ハーモロディックな2人~オーネットとジェームス・ブラッド・ウルマー
2024/03/26
ヘイデン、デナード
オーネット・コールマンの音楽のことを深い部分から理解していた人を3人挙げるとしたら、まず1人目は、なんといってもベーシスト、チャーリー・ヘイデンだと思います。
なにしろ、『ジャズ来るべきもの』以来の共演歴。
オーネットの当時としてはワケわからんと言うような同業者も多い中、ヘイデンのベースは、オーネットの音楽を理解したうえでのベースラインを提供しています。
本当にピタリと寄り添っている。
どういう思考パターンで、どういうロジックでベースラインを組み立てているのか、私にはまったく理解不能なのですが、それでも、もうこれ以上ないというくらい、オーネットの特異なメロディラインを的確にサポートしているのは驚異です。
オーネットの音楽を骨の髄まで理解しているといっても良いでしょう。
ですので、以降もオーネットとの共演以外でも、ドン・チェリーやジェリ・アレンやゴンサロ・ルバルカバらがオーネットの楽曲を演奏している時も、彼らの演奏を堅実にサポートし、「オーネットな気分」を的確に提供しているのです。
2人目はというと、デナード・コールマンでしょうね。
オーネットの息子のドラマーです。
そりゃそうでしょう、小さい頃からお父ちゃんと一緒にずーっと共演してきたわけだから。
ブルーノートの『エンプティ・フォックス・ホール』なんか、あれたしか彼が10歳くらいの時の演奏ですからね。
バスドラのペダルに足が届くかどうか分からないほどの頃から、お父ちゃんのアルトサックス(やヴァイオリンやトランペット)に付き合っているんだから、たとえ理解しようと思わなくても、オーネットの音楽が身体に染み付かざるを得ないですよね。
そういえば、『エンプティ・フォックス・ホール』のベースもチャーリー・ヘイデンでしたね。
よく二人の間をとりもって溶け込んでいるなぁと聴くたびに感心してしまいます。
さて、残る一人は?というと、これはもう、ギタリストのジェームス・ブラッド・ウルマーでしょうね。
なにしろオーネットが彼のことをものすごく評価していた。
そして、ウルマーもオーネットに心酔していた。
相思相愛(?!)ウルマーとオーネット
なにしろ、ウルマーはオーネットのところに入り浸って、というより、オーネットの家にずっと寝泊りしたり、一緒に音だしをしたりして半年くらい家に帰らなかったほどなんですよ。
それで奥さんに愛想をつかされたという(苦笑)。
それくらい、ウルマーはオーネットの音楽に惚れて、彼のすべてを吸収しようとしたし、オーネットもウルマーのことを生まれながらにしてハーモロディックを理解していると認めていました。
あ、ハーモロディックとは、オーネット独自の理論ですね。
そして、オーネットと共に活動すること2~3年。
「もう君に教えることはないから独立しなさい」とオーネットに促され、独立してからのウルマーの活躍っぷりはご存知のとおり。
とにかく独特で深く黒く、ワン・アンド・オンリーのサウンドを展開しつづけるようになりました。
このあたりのことは、YouTubeでオーネットとウルマーについての解説動画をアップしているので、聞いてみてください。
もうひとつの動画のほうでは、チラッとハーモロディックについても語っています。
あくまで私の感覚での理解のレベルですが……。
また、異端児的な扱いをうけがちなウルマーではありますが、正統派なジャズのルーツもかなりしっかりと持っている人であるということを上記動画で語っています。
なにしろ、アート・ブレイキーのジャズメッセンジャーズにも数ヶ月在団していたほどですからね。
あの、マイルスも、もしかしたらウルマーの才能に嫉妬したのかもしれないというエピソードもチラリと語っています。
ちなみに、私がもっとも好きなウルマーのギターは、デヴィッド・マレイの『チルドレン』というアルバムに収録されている《デヴィッド・ミンガス》という曲です。
このナンバーでウルマーに開眼して以来、いろいろと聴いた中でも、やはり『ノー・ウェーヴ』や、『フリー・ランシング』、そして『ブラックロック』あたりがウルマーの最高傑作だと思っています。
いやぁ、ウルマー最高!
オーネットが好きな人は、是非ウルマーのギターでよじれてください。
そして、ウルマーが好きな人は、是非オーネットの素っ頓狂で楽しい楽曲に触れて開放感を味わってください。
いやぁ、オーネットも最高!
記:2020/04/23